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「あやつが使う魔武器じゃが、あれは魔銃じゃったかの」
「魔銃?」
それはまた似合わなそうなものを。
「あやつのそれは零のとは大分勝手が違ってくるがの」
「違うと言うと?」
「零のやつは撃つ度に魔銃に魔力を込めるじゃろ?」
「まぁな。それが普通なんじゃないのか?」
いちいち弾を詰めるのもめんどいし、魔力があるこの世界では必要性を感じない。
と思ったところで俺の違和感センサーに何かが引っかかった。
と言うのも、この世界じゃ火薬を使った俺の思う銃はまだ開発されていない。
この世界は魔法がある分生活水準が低くはないのだが、科学的な面から見て文明が発達していない。
羅針盤も印刷機も火薬もあるっちゃあるのだが、魔法がある中では火薬は特に必要とされることもなく実用化も進んでいない。
電球もなければ光ファイバーなんてもってのほかだ。
しかし人々は何不自由なく生活できている。
話が脱線したが、まぁそういうことだ。
だから、今のこの幼女の問いには違和感を感じざるを得なかったのだ。
まるで弾丸を装填すると言う本来俺の知る銃の特性を知っているかの様なしゃべり方。
もしかして、
俺が知らないだけでそんな実弾の兵器がこの世界にもあると言うのか?
そんな推測を勝手に立てた俺は唾を飲み、リリの言葉を待つ。
そんな俺の心境を察したのか、リリも真剣な表情でその小さな口を開いた。
「はっきり言うてそれが普通じゃろうにゃ」
「にゃ?」
えっ?
何?
そんなに俺に抱き締められたいの?
「ったくしょうがねぇな゛っ!?」
両手を広げ無防備になった俺の顎に的確なナックルが。
脳が揺さぶられ目の前が真っ暗になった。
ならないけどさ。
とんだエアーブレイカーもいたもんだぜ。
この場合のエアーは雰囲気の方の意味な。
「何がしょうがないじゃまったく。
コホン。あやつのそれは前もって魔力を込めておいた弾丸を装填して撃つタイプのものなんじゃ。あまりメジャーではないがつまりは弾丸に前もって遅延魔法を籠めておくんじゃよ。それによって詠唱時間の短縮と連射が可能じゃ」
リリは俺がその手の銃を知らないと言うていで解説を進めてくる。
その顔がとても誇らしげなので少し付き合ってやるか。
「へぇ。でもそれじゃあ弾がなくなったら終わりじゃねえか?」
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