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「…失礼、します」
迷子状態の俺達はとりあえず寮長室なるところへと行くことにした。
1号館寮のドアのない入口をくぐり、階段や郵便受けだろう物を横切り一番奥にある木でできたドアを開く。
「・・・」
そこには腰まである深い緑色の髪に黄色いカチューシャをした20代前半くらいと思われる女性がいた。
部屋内はおよそ3畳の土間と5畳の畳と言う俺の予想の斜め上を行く間取りであり、寮長であろう女性はその畳の奥で座布団に正座していた。
女性は俺達を一瞥すると何も言わずにちゃぶ台の上のお茶をすすり、沈黙。
「こんにちは。私達今年の新入生なんですけど自分の部屋がわからなくて迷ってしまったのですが」
そんな状況を見かねて後から入ってきたルミアが俺を押し退け女性に説明をする。
「・・・あぁ、こんにちは。わたしはここで寮長をしてます、ミズキ・ヨナクニと申します」
女性は静かに湯飲みを置くと、ぼーっと5秒程俺達を見詰めた後、右手でポンと左手を叩くとその口を開いた。
その姿はこの世界に来てからは久しく見ていなかった日本人特有の顔立ちに和を彷彿とさせる動きの流れ。
名前とこの畳からしても恐らくは日本、つまりはジパングの血をどこかで受け継いでいるのだろう。
「こんにちは。私はルミア。こっちが零で、こっちはリリスです」
「どーも」
「ふん」
ルミアの紹介を受け、俺は右手を上げ、リリは腕を組み顔を反らした。
こいつの人見知りも大概だな。
「ご丁寧にありがとうございます。それで今日はどの様なご用件でいらっしゃったのですか?」
それは今さっきルミアが説明しただろが!!
と言うツッコミを反射的に言いそうになった俺をルミアが手を上げて制す。
「私達、今日ここに来たばかりで自分達の部屋がわからないので、ここで教えて貰いたいのですが」
流石王女と言うべきか、ルミアは嫌な顔をまったく見せず丁寧に説明を繰り返す。
「・・・まぁ、新入生の子達でしたか。今お茶を出しますから、靴を脱いでこちらへどうぞ」
ミズキさんは立ち上がり脇に置いてあった座布団を3枚並べると、奥にあるドアを開けて中へ入っていってしまった。
「えっとー、お邪魔します?」
俺達は顔を見合わせると戸惑いながらも靴を脱ぎ、膝上程の高さの段差の上にある畳へと上がった。
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