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ミズキさんは3分もしないうちに帰ってきた。
3つの湯飲みと急須、珍妙な果実をお盆に乗せて。
「お待たせいたしました」
ミズキさんはゆったりとした動作でお盆を置くと、ゆったりとした動作でお盆から湯飲みをどかし、ゆったりとした動作でお茶を注いだ。
その間、俺達は視線を合わせながらも何をするでもなく注がれるお茶を見ていた。
「このお茶なのですがね、わたしのご先祖様がジパングが滅びる前にこちらに持ち帰って栽培した物なんですよ」
そんな俺達をよそにミズキさんは何やらお茶の解説をし始めた。
「お茶には頭をすっきりとさせる効果と共に心を和ませる効果があるんです。それと、皆さんの下に敷いてあるこちら。畳と言うのですが、こちらもジパング由来の物なんです。空気の浄化作用や室内の調湿作用と共に集中力を高める効果もあるんですよ。それに何と言ってもこの香り。あぁ幸せ~」
ミズキさんは一人で勝手に喋り出したと思ったら、一人で勝手にぽわぽわと別世界へとゴーアウェイなされてしまった。
「変なところに来ちまったなぁ」
確かに畳の良さには同感ではあるが、置いてけ堀もいいところだ。
ルミアは速くも舌を火傷したらしく舌を出してパタパタしている。
俺?
飲めるわけないじゃん。
冷めるのを待つしかないのさ。
「そんなこと本人の前で言わないの」
「どうせ聞こえてないって」
「畳とはまた懐かしいのぉ」
リリはリリで畳を撫でながら感慨に更けている。
老けてはいない。
ミズキさんは湯飲みを両手に斜め上を向いている。
きっとあの先に太陽があるのだろう。
「どうする?」
「どうするって言われても」
「めんどくせぇし寮は諦めるか?」
「諦めるって、え?諦めるの早くない?」
「だって別に俺は寮なくても適当に自分で創ればいいし」
どうせ寮に入っても俺用に改造する予定なわけだし、別に無理に寮にこだわることもない。
と言うのは建前で、ルミアをからかうネタを見付けただけだ。
「私やリーちゃんはそうはいかないから!?」
「いや、わしも自分で家を造ることくらいは雑作もないのじゃが」
リリは多分天然だろう。
「もー!!そう言う問題じゃないから!!ヨナクニさん!!帰ってきて下さい!!」
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