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「お待たせいたしました」
ミズキさんは薄い本(決していかがわしくない)を片手に直ぐに戻ってきた。
ミズキさんはちゃぶ台の上でそれを開くとぱらぱらと眺める。
そしてその手が数秒足らずで止まった。
「ルミア・ガイアス様、マルタ中央訓練所出身。ギルドランクはA、属性は火と風、身長は155cm、体重は「ああああああああ!!」」
ミズキさんはルミアの項目を見つけたみたいで、淡々と眈々とルミアの個人情報を読み始めた。
しかしその途中、突然ルミアが騒ぎだし薄い本(恐らくは生徒の名簿)を引ったくった。
遂に頭がキチッたか?
「はぁはぁ。ミズキさん、今、必要、なのは、わたしの、部屋番号、です。あれ?」
ルミアは肩を忙しく上下させながら先程までミズキさんが見ていたページを見るが、そこで首を傾げる。
「どうした?」
俺は気になり名簿を覗くと、
「なんだこりゃ?」
それはただ真っ白なページが続くだけの、最早ノートだった。
「ミズキさん。何ですかこれは?」
「うふふ。これには何も書いてありませんよ」
そんなルミアの問いにミズキさんは手を小さく口に当てながら笑い、答える。
しかし笑いには一切の嫌味はなく、改めてみると綺麗なその顔立ちに自然と見蕩れてしまう。
「どう言うことですか?」
それはルミアも同じだったのだろう。
頬が少し赤く染まっている。
「生徒様の大切な個人情報ですので、この様な物に留めておくことはしません」
「え?でもさっき…」
「ですので個人情報の書いてある書類は全て憶えて消却することにしているんです」
わぁ、天然の目録さんがいるぅ。
全生徒の事細かな個人情報を丸暗記とかチートもいいところだろ。
あぁ、俺もやる気があればできるのか。
ないけどさ、やる気。
「じゃあこれは」
ルミアはそう言うと真っ白の薄い本を片手で振る。
そりゃそうだ。
全部憶えているのなら、これを取りに行った理由がわからない。
「これはひとつの記憶術です。こうして白紙の本を開くことで大量の記憶からスムーズに必要なことを思い出すことができるんです」
どこの人事部だよ!?
ミズキさんはまさかのできる人だった。
「それで私の部屋は?」
「はい。ルミア様は191号室、この1号館の9階です」
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