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「僕がいるんだ。それにミーネも。今はリリス様もいないし心配することはない」
僕もミーネも、それにエルトも戦闘については同学年の中では頭一つ飛び抜けた能力を持っている。
血筋についてはあまり頼りたくはないが、それがなくとも僕達はあの半年の旅で他の生徒とは比べ物にならないほどの実戦を経験し、技術を磨いた。
自惚れではなく事実として、僕達は強い。
及川がどれほど強いのかはわからない。
リリス様と行動を共にしているくらいだ。
そこそこの実力はあるのだろうが、それでもこの状況で僕らが気負いすることはない。
第一に学園内での魔法を使用した争いは原則として禁止されているんだ。
今朝のことは例外として、及川も無闇な攻撃はしてこないだろう。
「う、うん」
エルトもその事がわかったのか静かに頷く。
「何の問題もない。帰ろうか」
僕は及川に同意を求める視線を送ると、及川の反応を待たずに隣についた。
ミーネとエルトも僕に習って隣に来る。
「はぁ」
及川の口からそんな溜め息が吐かれるが、吐きたいのはこちらも同じだ。
「及川、君はリリス様のなんなんだ?」
まどろっこしいのも鬱陶しがられると思い、単刀直入に聞くことにした。
僕の問いにエルト、それにミーネも微かだが興味あり気な顔をし及川の顔を見た。
しかし、当の及川はなんの表情も見せずただ前を向いて歩いている。
「聞いているのか?」
「…」
何のアクションも起こさない及川に催促するも、及川は目線すらこちらによこさない。
「もう一度聞くが君はリリス様の何なんだ?」
じれったくなったなった僕は再度聞く。
「…リリスに聞いてください」
しかし帰ってきた応答はそんなものだった。
あの人に直接なんて聞けるわけがないだろ!!
「お前はどうしてリリス様と一緒にいる?」
「リリスに聞いてください」
「リリス様の秘密は知っているのか?」
「リリスに聞いてください」
「ルミア様とはどんな関係だ?」
「リリスに聞いてください」
「ギルドランクはいくつだ?」
「リリスに聞いてください」
「答える気がないのか?」
「リリスに聞いてください」
「馬鹿にしているのか?」
「…ふっ」
「貴様笑ったなっ!!」
会話にならない。
全然目も合わせないし、声も暗くて初めの印象とは大違いだ。
「ロイドー。こんな奴もう放っとこうよ」
エルトが隣でごねる。
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