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「どうしたの?」
黄緑の震えに気付いたルミアがその顔を覗き込む。
「あっ…えっとー、その…ごめんねルミちゃん、ちょ、ちょっと野暮用を思い出しちゃった」
黄緑は目を泳がせまくって今考え付いたとしか言い様のない言い訳を言う。
「野暮用?」
「う、うんそうそうだからあたし達は…脱出するね」
「え?」
「…ッ!?」
「またねー」
黄緑はリリと出口を再度確認するやいなや肉体強化まで行い走り出した。
呆然とするルミアの前を走り抜け固まったままのミーネたんの手をとると、俺とロイドの間を縫うように駆け抜け、まるで風のような勢いで玄関を出ていってしまった。
「急いでたけど野暮用って何だったんだろう?」
こいつ信じてるのか!?
「よかったのか?」
俺は置いていかれたロイドの横を抜けリリの頭側のソファーに座る。
「何がじゃ?」
「逃げちゃったぞ?」
「そうじゃな」
特に興味もないのか足をばったばったさせるリリ。
「ロイドは食べてくよね」
一人硬直するロイドに笑いかけるルミア。
そんなのってないよ。
ひどすぎるよ。
「ぼ、ぼくも…」
ルミアの真っ直ぐな目から逃れようと目線を横へ逃がすロイドと目が合う。
野郎と合ってもなんも嬉しくねぇよ。
ったくしょうがねぇなぁ。
設定的に会って間もないわけだし俺はインキャラなんだから、今は深い接触は避けておくか。
「…ルミア」
忘れてたわけではないキャラ設定で少しうつ向き声のトーンを落とす。
「何?零」
「…この人も…用事があるみたい…だから」
「そうなの?」
俺のキャラの変わりようにはオールスルーでルミアがロイドに尋ねる。
「そ、そうなんだ。すまないが今日は帰らせてもらうよ」
「そうなんだー。じゃあしょうがないねー」
「それじゃあ」
リリと俺の方をちらちらと見ながらロイドは何故か忍び足で玄関へ向かう。
まったく、俺はちゃんとあいつらのことを思って相部屋だって言ってあげたのになぁ。
好奇心旺盛も程々にしろよ。
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