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「只今より、第99回しりょく検査開会式を始める!!」
ユナの宣言と共にそれは始まってしまった。
俺がそれを知ったのはほんの数十分前だった。
「ルミア、今からするのは視力検査だよな?」
「そうだよ」
昨日の連絡に従い俺、リリ、ルミアは校舎裏の教員棟を通り過ぎ、裏山前の広場へ向かう途中だった。
ファミリアは同行不可らしいのでアッシュたんはお留守番だ。
周りに目を向けると俺達と同じ様に歩く生徒がちらほら。
しかしその足取りは重く、戦場にでも向かうかのような険しい表情をしている。
「訳がわからん」
視力検査を外でやることにも多少の疑問は残るがそこはもう目を瞑ろう。
しかしこのピリピリした空気はなんだ?
「零にはわからないかもねー。けど、これから半年の学園生活を左右する大事な検査だからみんな緊張してるんだよ」
ルミアは周りの生徒を眺めながら言う。
「かく言う私も実は緊張していたり」
人指し指でポリポリと顔をかきながらぎこちない笑顔を見せるルミア。
「わぁ~あ。なんなんじゃまったく」
朝の弱いリリは俺の袖を持ちながら危なっかしくもうとうとと悪態をつきながら歩く。
「視力検査、だよな?」
「うん。死力検査だよ」
「…死力?視覚機能の能力検査じゃなくて、死ぬ、の方の力?」
「え?そうだよ。死なないための生き残る能力を測る検査。通称死力検査。視覚機能なんて魔力で強化するから検査なんてする意味ないじゃん。変な零」
あれ?
俺が思ってたのと大幅に、と言うか全く違う。
何それ?
死力検査?
「んなもん知らねぇよ!!」
「えー。だってこれはトーラ学園名物で最初にして最大のイベントだよ?」
「いやいやいや、聞いてませんからそんなこと」
死力検査?
生き残る力?
…昨日のあれはそういうことか!?
バトルロワイヤルでもさせる気か!?
これは急展開だぞ。
俺は一体どうすれば…まぁいっか。
ここは最低の成績でも出して遊ぼうか。
「零、また変なこと考えてるの?」
ルミアがやれやれといった顔で顔を覗き込んでくる。
「また、は余計だ」
「んぅ~ん、それでわしは何をすればいいんじゃ」
リリは目をごしごしとしながら唸る。
「いや、今日は好き勝手してくれればいいさ」
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