ボーイミーツティーチャーズ

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それからは他生徒もリリの強さを学習したのかなかなか挑んでくる生徒もいなかった。 リリと俺がいるのは木々の開けたちょっとした広場。 バスケコートほどのそこの中心には樹齢数百年はくだらない老樹が佇んでいる。 若干丘になっているそこは周りからは丸見え、格好の的もいいところだ。 こんな所でこんなちっちゃいの、しかも黒髪、がいれば狙われのも当然か。 今じゃそれが逆に働いている訳だけれども。 「暇だなぁ」 「そうじゃのう」 ケータイを確認してもいくつかの赤丸が俺達の周りをわざわざ避けているのがわかる。 あんだけ暴れてればな。 開始から2時間が経過して残りの生徒は180人。 初めの1時間がおかしかったんだな。 先程までは混乱してうろうろしていた生徒達も、今ではほとんどが徒党を組むなりじっと隠れていたりする。 その心中は全員同じ。 少しでも長く生き残る。 大して強さに差もない相手と戦ってポイントを稼ぐより、ただ生き残る方が得策だと気付いたのだ。 そしてこの試験は予めこうなることを見越して、時間差で教師たちを投入することになっているのだろう。 そうなると、今からの1時間は探り合いやらなんやらでとても不愉快だ。 「というわけで、リリ。焼き払え!!」 「何が、というわけ、なんじゃ?」 俺は左手を腰に当て右腕を半円を描くように振ると、リリに言い放つ。 しかし、俺の思いは上手く届いてはくれなかったようだ。 「いやさぁ、みんな保守的に構えちゃって暇じゃん?だから焼き払おうぜ♪」 「生徒を炙り、あぶり出すわけじゃな」 「そうそうそれそれ」 「鬼じゃな。それにその提案にはのれんのじゃ」 「えー、何でなん?」 「無闇に木を焼くなぞわしにはできん」 「んー、まぁ、平和主義者の俺としてもぉ、そこは心苦しくはあるけどさぁ。ん~、じゃあこの暇をどう潰す?」 「その辺で昼寝でもしておれ」 「それは名案だ。まだ昼じゃないけど今朝は早かったかんな。何かあったら起こして」 「わかったのじゃ」 そんなこんなで俺は老樹の下に寝転がった。
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