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「ん?どこかで見た覚えのある娘っ子じゃな」
元来あまり他人に対して興味を持たないリリスはその少女のことを思い出すのに少しの時間を要した。
その間にも挙動不審な動きでキョロキョロしながら歩く当人は鈍感なのか、未だリリスに気付くことはなくリリスにお尻を向けて近付いて来る。
そして転んだ。
「っきゃふ!?」
「ああ」
そしてその姿を見てリリスは少女のことを思い出した。
決して少女のパンツを見て思い出したなんてことはない。
決してない。
少女の名前はアイロ・ハミルトン。
リリスと零のクラスメートで、零が昨朝校門前で吹き飛ばした少女だ。
アイロはお尻をさすりながら立ち上がるとへっぴり腰のファイティングポーズで周りを警戒する。
「何をしておるのじゃ?」
「はひゃっ!?」
そんなアイロの姿にリリスはいい暇つぶし相手が来たとばかりに口角を吊り上げ 、声をかける。
声をかけられたアイロは冷水でもかけられたかのように飛び上がり奇声をあげた。
「あっ、あなたは!!」
そんなリリスを視認したアイロはリリスを指差し驚愕の顔を浮かべる。
リリスはその反応に満足そうにアイロを見下ろす。
心の中で。
「ふっ、なんじゃこむす「きゃるる~んの人!!」…何じゃ?」
きゃるる~んの人…じゃと?
「きのうの自己しょうかい、とってもかわいかったです!!」
謎の呼び名にリリスが戸惑っている間にもアイロは警戒を解きトコトコとリリスの元へとかけてくる。
そして、
「むぎゅー」
大して身長も自分と変わらないリリスに抱き付いた。
厳密にはアイロの方が5cmほど高い。
「何をするのじゃ!?」
嫌がるリリスではあったのだが、振り払うにしてもあまりに邪気がなく幼いアイロに魔法を使うことを躊躇してしまい、結果じたばたするだけに留まった。
「いろんな人においかけられて心ぼそかったです」
この試験はどの生徒を倒してもその獲得ポイントは変わらない。
よって自分より強い者からは逃げ、弱い者を倒すのが基本になる。
その点、このアイロは周りの生徒にとっては格好の餌食だったのだろう。
「あなたもひとりでそれはもうこわかったでしょうです」
「いや、わしは別に」「ですのでこれからは2人で協力しましょう!!」
リリスの話はお構いなしに、ここに新たなコンビが結成された、らしい。
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