ボーイミーツエンジェル

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まぁ、席がなくなってるよりはましか。 ルミアの手に汚れた雑巾が握られているのを見ると心苦しくはあるが、ここはルミアを邪険にした方が面白いだろう。 「…」 俺はルミアと一度目を合わせると、そのまま無視して視線を外に向けて頬杖をついた。 その態度に教室中の生徒から嫌悪の雰囲気が漂うのがわかる。 『ルミア様が折角気を使われて差し上げたのにあの態度は何?超キモいんですけどー』 的な感じだろうか。 謙譲語なのか尊敬語なのか文法がぐちゃぐちゃだ。 要するに、俺は登校2日目にしてそのポジションを確立したわけだ。 人間、取り分けこの情緒不安定な思春期の子供、は何事も区別をしたがる。 そして自分とは違う区分の人間に対して何かしらの強い感情を示す者は少なくない。 俺の場合はそれが負の感情だったと言うだけのことだ。 今回のそれはまず髪の色。 これだけでも十分だが、おそらくはもう一つ。 嫉妬。 一般の生徒からしたら憧れの対象であろうルミアやパステル共と関係を持っている。 それだけでも口実としては十分だな。 学校なんてものはストレス製造所に等しい。 自己処理できないストレスはどんどん溜まる。  そんな中に俺がいれば格好の的だ。 俺はこのクラス、ひいては学年の過半数の生徒に区別され、その捌け口として抜擢されたのだ。 言わばゴミ箱係り。 皆のストレスを1人の人間に集めることによりそいつ以外の奴は楽しい学園生活を送れると言う素晴らしき社会の縮図の完成だ。 だが社会と違う点が二つ。 一つは俺もこの展開が楽しくて仕方がないこと。 もう一つは皆が今後も楽しい学園生活を送れる保証はないということ。 うん。 全然社会の縮図じゃなかった。 しかし、大人な俺はしばらく溜め込むことにしましょう。 勿論自己処理はできないが。 「……ふん」 俺が席についてそんな自己陶酔をしてる間約10秒ほど、ルミアは不満そうに俺を睨んでいたが、俺が全く反応を示さない事に怒ったのか鼻を鳴らして自分の席に着いた。 パステル共はまだ来ていない。 と言うか、来ていなくてよかった。 もしいればどうせ白やロイドが奮闘し、俺の意思を無視して俺がクラスの一員にされてしまう流れに持って行かれていただろう。
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