ボーイミーツエンジェル

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「本?」 誰がともなく呟かれた。 光から出てきたリリが持っていたもの。 それは鈍器にも使えるんじゃないかと思わせるほど分厚い一冊の古びた本だった。 「リーちゃん、なーにーそれ?」 いち早くルミアが駆け寄りリリに尋ねる。 「魔導書じゃ」 興味津々で尋ねるルミアに対してそう答えるリリの顔はとても素っ気なく、つまらなそうなものだった。 「魔導書?」 「あぁ。そうじゃな、ほれ」 リリはよくわかっていないルミアにその魔導書を投げ渡す。 「えっ!?っとと。どういうこと?」 「使うてみよ。使い方はわかるじゃろ」 「本で読んだことはあるけど、実物を見るのは初めてだよ」 「魔力を流せば勝手に起動するじゃろ」 「う、うん」 リリに促されるままに片手で魔導書を持ち前に構える。 適当に開かれたページには何も書いておらず、真っ白だ。 俺も魔導書はまだ見たことない。 と言うか、その存在を知らなかった。 王族のルミアが見たことないくらいだから相当貴重なものなのだろうが。 その使い方は色々想像できるが楽しみだ。 「じゃあ、行くよ」 周りに目を配せて唾を飲むルミア。 魔導書に魔力を集中させると、ふわっとルミアの髪や袖が浮き、ルミアを中心に回るように風が生まれる。 魔導書が淡く光り手を触れずしてそのページがめくられていく。 ページは1ページ目。 初めは真っ白だったページに何やら文字が浮かび上がって来た。 よ、読めない。 「″オーバーグロウ″」 目を閉じたままのルミアが魔導書の持っていない右手を振り翳し唱える。 すると、ルミア足元に生えていた草がうねり始め瞬く間に成長してその頂点に白く小さな花を咲かせた。 「こんなもんじゃな」 「おおおおお!!」 「なるほど」 「これはすごいな」 「…ルミア…すごい」 「ふんっ」 「………」 その光景にリリは想像通りとばかりに吐き捨て、黄緑は拍手をする。 ロイドは顎に手を当て感心し、白と水色は単純に賞賛した。 紫はライバル心を燃やしているのかそっぽを向き、黄色は黙りで険しい顔をしている。 「リーちゃん、どういうこと?」 当人が一番戸惑っていた。 「これはわしのおった緑の一族の長に代々伝わる魔導書なんじゃよ」 戸惑うルミアにリリはめんどくさそうな調子で答える。 「緑の一族?」 「あぁ、お主には言うとらんかったの。まぁそのことは今はよかろう」
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