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「そろそろですね」
そんな状況を我関せずと隅っこで眺めているとルフナがこちらに近付いてきた。
チッ。
「………」
「君もどうやら彼については知っているみたいですね」
「………」
話しかけんな馬鹿。
俺はルフナから顔を背けるように横を向くと他の生徒が目に入る。
白が魔力を籠め始めて魔法陣が光り出す。
場合によっては俺も出動しないといけないんだからあんま構うなよ。
「やはりどきどきしますね。彼は一体何を召還するのでしょうか」
「アナトリア先生、こんな所にいたのですか。早く持ち場に着いて下さいます?」
そんなルフナに後ろから声をかけるのは紫だった。
「おやおや。そんなよそよそしい呼び方をしなくともいいんだよ?それに今回は僕の役目はなさそうだからここで及川君と高みの見物とさせて貰うよ」
そんな紫に対してルフナは変わらぬにこにこ顔で意味のわからないことを口走る。
「確かにエフェメリス様がいれば問題はなさそうですが……」
「ほらほら始まりましたよ」
顎に手を当てて考え込む紫にルフナが促す。
「はあっ!!」
近くに枯れ葉が落ちていれば割れるんじゃないかと言う剣幕で白が魔力を流すと、先と同じように魔法陣が光りに包まれる。
しかしリリの結界のおかげでその光は通常の生徒と変わらない、若干劣る程度の淡いものだった。
光は一瞬。
周りにいる生徒も特別白に注目することはなかった。
というか、ここまでの面子が揃っていれば確かに可能ではあったのだろうが、わざわざこんな多くの生徒の前でやらなくても業後に残って秘密裏にでもやればよかったんじゃないのか?
その辺、俺には思いも寄らない企みがあったのかも知れないが、まぁいいだろう。
光が収まり白の姿が浮き出る。
そしてその頭上には白い光の玉のような物が浮いていた。
「何でしょうね?あれは」
俺の横で顎に手を当て俺に問いかけてくるルフナの言葉には俺がその答えを知っていることを知っていかのような雰囲気があった。
「……」
いや、知ってるけどもさ。
こいつの心を読みたい衝動をなんとか抑えて光の玉に再び向き直る。
周りの生徒も光の玉に気付きざわつき始めた。
う~ん。
これはどうしたもんか。
神の野郎、はじめからこうなることがわかっててこのタイミングでこいつを送って来やがったな。
俺は右ポケットのそれをズボンの上から触った後、空の向こうを睨んだ。
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