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「これは他の生徒は避難させた方が良さそうですね」
隣のルフナが頬を掻きながら動きだす。
「お前は行かないのか?」
反対隣で腕を組んで傍観するリリに尋ねる。
「わしが出て行って認めさせては意味がなかろう。それにあの雰囲気ならそう被害も出すまい」
リリなりに色々考えてるんだなぁ。
まぁ、セラさんも本気でやる訳ではなさそうだし、テストみたいなものだろう。
そう思い自分も高みの見物を決め込もうと思った時だった。
「ユミルもそう気張んなって、アタシらがいればあんなおばさん天使余裕だっての」
緊張する面々を解そうとしたのか、本当にそう思っているのか。十中八九後者だろう、茶色がそんなことを口走った。
「おおお、おばっ、おばさん?このワタシがおばさんですって???」
三十路に迫るOLじゃあるまいし、その言葉に過剰反応を示したセラさんがその白いフランス人形のような顔を真っ赤に染める。
「おばさんでしょ?今何歳よ」
それにさらに追い打ちをかける茶色。
口悪いなぁおい。
「よろしい。戦争を始めましょう」
こっちはこっちでキレるの早いなおい。
セラさんの顔からスッと色素が抜け、口調はそのままに先程まで柔らかかったその目を鋭くし翼を大きく広げた。
誰の目から見ても明らかな攻撃態勢だ。
「これはまずいですね」
生徒に指示を出していたルフナが冷や汗を流し臨戦態勢に入る。
先程まで傍観する気満々だったリリやレンも含めた面々も急いで魔力を込め始める。
「ワタシは、まだ、ピチピチです!!」
セラさんは空高く舞い上がると、こちらを見下ろす形で巨大で真っ赤な魔法陣を幾重にも展開させた。
それは見上げる限りいっぱいに広がり空を覆い尽くし太陽光を遮り、学園だけでなくこの地方一帯をその赤色に染め上げた。
「大きすぎる」
ロイドが空を仰ぎ絶望する。
「なんて魔力ですの」
紫は圧倒的なチカラの前に膝から崩れ落ちる。
「……これは…無理」
ミーネたんの顔がその髪に負けず劣らずの蒼白になる。
「無理無理無理無理」
茶色は頭を振りながらあたふたするだけ。
「くそ、間に合えっ!!」
白が抑えていた魔力を急いで解放するが、とても間に合いそうにない。
「これはちと厳しいの」
リリがやれやれと言った顔でこちらに目線を向けてくる。
「「零!!」」
ルミアとレンが同時に俺の名前を呼ぶ。
なんだこの急展開は。 あほか。
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