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「何々ー、何やってるのー?」
「なんですー!!」
ルミアが人だかりを掻き分けて行き、その後をアイロが追いかけていく。
「どうするのじゃ?」
「……はぁ。見に行くに決まってんだろっ」
ルミアやアイロ関係なしに野次馬根性満載の俺に通り過ぎる選択肢はなかった。
「ねーねー、何してる、の……」
「どうしましたか?ルミアさキャッ!!」
アイロの短い悲鳴が聞こえたので俺とリリも急ぐことにする。
「おい押すな…よ」
「えっ!?」
「黒髪だ」
「マジかよ」
俺とリリがその人だかりに入っていくと、初めは不機嫌そうに押し退ける生徒も俺のリリの髪を見るやいなや驚くように道を開けた。
まぁ、この一年でこういうのにも慣れたと思っていたが、今回は少し違っていた様だ。
「どうしたのじゃルミア」
人だかりの先頭で立ち止まるルミアの横に着いたリリがルミアの袖を引っ張るが、その応答を待たずにその理由はわかった。
「はっはっはっ!!いい姿だな」
「いつでも先生方が守ってくれるなんて思うなよー?」
「いいねー。まだ抵抗できるのか。タナカ」
そこでは10人の男子生徒が一人の生徒をカーテンか何か、大きな布で簀巻きにして蹴ったり魔法をぶつけたりしていた。
制服から見て2年生だろう。
簀巻きにされている生徒は器用にも簀巻きにされた中から魔法壁を張るが、それも10人がかりですぐに破られてしまう。
その光景を前にして止める生徒はいない。
中には煽る者もいれば目を伏せ立ち去る者もいるが、殆どが興味本位で眺めているだけだ。
にやにやと楽しそうにしている者も少なくない。
何故そんなことが起きているのか。
そんなことは一目瞭然だ。
縛り上げられている生徒は黒髪なのだ。
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