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「酷い。何でこんな……」
口元に手を当て目をそらすルミアが誰にでもなく声に出す。
その問いには簀巻きから微かに出ている黒髪の頭を踏みつけている男子生徒が勝手に答えてくれた。
「まったく、残念だったよなー。いつもならすぐに駆けつけてくれる先生様も今は何やら集まって会議でもしてるらしい。いくらお前でもこの人数を一度に相手するなんてできんよ、な!!」
ベラベラと現状をわかりやすく説明してくれた男は大きく振りかぶると、つま先に強化魔法をかけて黒髪の生徒の顔の辺りを蹴り上げる。
黒髪の生徒は一瞬遅れて魔法壁を張るが魔法壁ごと吹き飛ばされて背中から落ちて咳き込む。
周りからは所々笑い声が起き、俺のすぐ前と下からは小さな悲鳴が聞こえた。
そして自分の拳が自然と握られていることに気付く。
今の衝撃で簀巻きから長い黒髪が舞った。
今まで簀巻きになっていたから気付かなかったがその生徒は女子だ。
これはちょっと黙っとけねぇだろ。
あれが男子生徒だったら冷静に対処もできただろうが、俺は俺が思っているよりも随分と単純なようだ。
「おい!!ここにも2人黒髪がいるぞ!!」
男子生徒の1人が俺達に気付き指を指す。
その声に簀巻きを囲んでいた男子生徒も俺達の方を向き、周りの生徒が俺達から離れた。
「……零」
どっちの心配をしているのか、ルミアが振り返ってくる。
「わしがやろうか?」
「いや、いい」
不機嫌そうな声のリリの頭をポンと叩き前に出た。
それにより男子生徒達が完全に俺と向き合い品定めとばかりに顔を覗き込んでくる。
イラ
「おいおいおいおい今年の1年生には2人も黒髪がいやがるのか」
「こいつらもこいつみたいに生意気な黒い目をしてやが、る!!」
「ぐっ」
男子生徒の一人が簀巻きの中間辺り、お腹に当たるだろう部分を蹴るがその中身である女生徒にはもう魔法壁を張る力もない様だ。
「ゴミ共が」
こいつらにはキツいお灸を据える必要があるな。
周りには数十人かの生徒の目があるが、ここまでコケにされたら仕方ないだろ。
こんなのはほんのお遊びだ。
後のことは後で考えればいい。
「お前もすぐに簀巻きにしてやるから、ちびんなよー」
「黙れカス」
近付いてくる頭の悪そうな男子生徒の足を払い後頭部に裏拳を振り抜く。
男子生徒は顔面を地面に擦り付けながら後方に吹き飛んだ。
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