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はずだったのが、
男子生徒は前のめりに躓いただけで踏みとどまった。
「なにしやがる!!」
「は?」
突然の出来事に思考が追いつかない。
俺は確かにこいつをぶっ飛ばした筈だよな?
なのに、何故こいつは立ってこちらを睨んでいられる?
「ふざけやがって!!」
唖然とする俺に向かって拳を振り上げる男子生徒。
「零!!」
だからお前はどっちの心配をしているんだよ。
スローにさえ見える男子生徒の動きを目で追い、今度こそはとカウンターのパンチを狙う。
「“ソニックブースト”!!」
男子生徒は拳を振り抜くのに何重もの風魔法の魔法陣を通過させることによって速度を飛躍的に上げて俺の顔面を狙う。
初級魔法の複合型。
「雑魚だな」
その程度の加速じゃ対して変わらない。
俺は拳の下に潜り込もうと右足を踏み込んだ。
「は?」
右足が上手く踏ん張れない。
地面が歪んだ?
水魔法か?
いや、俺が気付かない筈がない。
ならなんだ?
まぁ問題ないかこの程度の魔法。
簡単に避けられ……
「がっ!?」
気付くと俺は仰向けに倒れていた。
空が青いし、ぐるぐる回っている。
頬を殴られた?
痛くはないが微かに熱を持っているのがわかる。
地面がひんやりと冷たくて気持ちいい。
遠くで不愉快な笑い声と俺の名を呼ぶ声が聞こえるが、頭を持ち上げてそちらを見る気が起きない。
全身からチカラが抜け、目蓋が重い。
まだ俺が生身だった頃に3日程徹夜した朝のようなぼんやりとした不思議な感じだ。
いや、生かそうじゃないかと言われれば俺はまだ生なのか?
ただ頑丈なだけで。
なら、なんで俺はあんな三下のパンチで立ち上がれずにいる。
何?
さっきのあいつ、幻想を殺しちゃう系の主人公だったりするの?
色々な考えを巡らせながら、まるで地面の中に沈んで行くかのような感覚にとらわれながら、俺は意識を失った。
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