よろず屋九条

8/10
前へ
/25ページ
次へ
明「父さん父さんって…… あの人が何をしてくれたっていうんだ! たまに花札やってくれたくらいじゃないか!」 九条「ねーちゃん追わなくていいのか?」 明「知りませんよ… 自分で決めて行ったんだから。 ………姉上もやっぱり父上と同じだ。 父上も義理とか人情とか言ってるお人好しで、そこをつけこまれて友人に借金しょいこまされてのたれ死んだ。 みんな不器用過ぎますよ… 僕は綺麗事だけ並べて死ぬのは真っ平ですよ……」 「゙親が大事にしてたものを護るのに理由なんているの?゙」 だが明は日出子が言った一言が耳から離れなかった。 九条は黒松が置いていった店のチラシを眺めている。 明「姉上や父上とは違う。 僕はもっと器用に生きてやるんだ。」 九条「そうかい……でも、俺にはお前が器用にはとても見えねーがな…」 明はうつむいていた。 目にはうっすらと涙を浮かばせて。 九条「理屈なんていらないさ。 そこに護りたいものがあるなら刀を抜けばいい。」 九条は立ち上がり、明をじっと見た。 九条「ねーちゃんは好きか?」 コクりと明は頷いた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加