始まり

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九条「しっかし…凄い賑わいだな… さすがは大江戸…」 九条はぶらぶらと街を歩いている。 街にはかんざし屋や茶店、米問屋、材木商などが軒を連ねていた。 九条「ん…………?あれは異国風の茶店か?」 九条の視線の先には、日本人には馴染みのないレンガ造りの建物があった。 その建物の入り口には、 「先着三名限定新作珈琲無料」と書かれた板が立て掛けてあった。 九条は思わず自らの財布の中身を探る。 九条「………無料か… なにかは分からんが、少しは腹の足しになるかな…」 九条はその建物の扉を開けた。 カランカランと来客を知らせる鐘がなる。 准「いらっしゃいませご主人様(はぁと)」 九条「ご、ご主人様!?そ、それって俺のこと!?」 九条は凍りついた。 その店員の格好、髪型、言葉づかいにである。 准「はい、そうですご主人様(はぁと) こちらの席にどうぞ」 九条「は、はい………」 店員に促され、九条は席に座る。 准「ご注文の方はどうしますか?」 九条「外に書いてあった新作珈琲ってまだ無料なのかな?」 准「はい!まだ大丈夫ですよ!」 九条「じゃあそれで」 准「はい、わかりました!では他には?」 九条「いや、それだけで」 准「他には何か?」 九条「だから、それだけで………」 九条は苦笑した。 准「何か?」 九条「いや…あの…」 准「な・に・か?」 店員が他にも何か頼めと言わんばかりの表情で九条を威圧する。 九条「ハムサンドをお願いします(棒読み)」 准「わかりました。 店長の新作珈琲とハムサンドですね。 しばらくお待ちくださいご主人様(はぁと)」 九条「は、はい…」 店員は満面の営業スマイルをみせると、下がっていった。 九条「しかし………すごいなこの茶店………… まるで異国に居るみたいだ」 九条は店の中を見回す。 窓際の席には一人の女性が本を読みながら珈琲を飲んでいた。 九条「どうしよう………… 金もないのに………」 店員の威圧に負けた自分が情けなくなっていった。
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