始まり

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維織「………………………」 その女性は九条のことになど気にもかけずに、静かに本を読んでいた。 准「お待たせいたしました、ご主人様。 私、夏目准っていいます、ご主人様は?」 准が珈琲を運んできた。 九条は珈琲を受けとると、一口飲んだ。 九条「俺は九条って言うんだ…………これは異国の飲み物かい? 結構苦いんだな」 准「じゃあ、お砂糖をお入れになってください」 九条「砂糖って………これ?」 九条が指差す先には角砂糖があった。 九条は角砂糖を見るのが初めてだったのだ。 准「はい、それです」 九条「これ、持って帰ってもいいかい?」 准「ダメですよ、ご主人様」 准は笑顔で返したが、その笑顔にはなにか毒々しさが込められていた。 数分後、九条はハムサンドと珈琲を完食した。 九条「あ、すまないが水を…」 それから九条は何度も水をおかわりしていた。 准「じ~~~~」 九条「…………………(汗)」 准「じ~~~~~~」 九条(見てる!見てるよ!さすがに五時間以上水だけで座っているからな……… 俺がお金を持ってないことに気付いてるよな、たぶん……) 准「じ~~~~~~~」 九条(どうしよう。このまま逃げるか? いや、食い逃げはダメだよな……… じゃあ素直に謝るか。 それが一番だな…よし!) 准「じ~~~~~~~(怒)」 店員の顔が少し怖くなっていった。 維織「ごめん、准ちゃん会計おねがい。」 准「えっ?は、は~い」 また営業スマイルに戻る。 店員の笑顔の切り替えの速さ恐るべし。 九条「ん?」 本を読んでいた女性が会計をするようだ。 だが様子がおかしい。 維織「あのさ…………払うわ」
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