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ふわぁ、とだらしのないあくび混じりの声が部屋に響いた。
「あくびなんかしてないで早くご飯作ってほしいかも」
そんなことを言われても、とぼやきながらも少年、上条当麻はしぶしぶ立ち上がる。
少女、インデックスは文句を言ってはいるが、その目線はテレビでやっているアニメに釘付けである。
作ったところであまり感謝されていない気さえする上条だが、そんなもののために食事を作るわけではないので反論をしない。する気が起きない。
「今日は何にすっかなぁ……って」
食事を作るには食材が必要だ。もちろん上条とて寮暮らしの学生、十分承知している。
が、どうしたことだろうか。先日買いだめしていた分の食材がなくなっている。
空っぽというわけではなく、そのままいただけるものばかりが消えている。
「……インデックス。ここに入れてたソーセージやら唐揚げやらはどうしたんだ……?」
そこでようやくテレビから目を離した修道服姿のシスターは、上条の問いかけに首を傾げてから笑顔で告げた。
「うん? すごくおいしかったよ? また食べたいな!」
「ーーーー」
口をパクパクさせながら、上条は泣きたくなるが我慢。
「……すまんインデックス。今日の飯はコンビニ弁当だ。今から買ってくるから待ってろ」
「えーっ!? どうして!?」
えっ、そこで聞いてくるの、と上条は本当に泣いてしまおうかと悩む。
しかしなんとか立ち直り、インデックスをあしらいながら部屋を出た。
あの場で彼女を叱りつけなかったあたり、ずいぶんと大人ではないか。
そう無理やり納得しながら夜の街へと上条は歩き出す。
闇の広がる光景はもはや見慣れたが、やはり見ていて気持ちのいいものではない。
(さっさと済ませちまおう)
小走りになりながら一番近くのコンビニへと向かう途中、その足は急に止まった。
ーー違和感。
そう例えるのが一番しっくりくるだろう。そこに本来あるはずのない、あってはならないはずのものが“ある”。
普通の人間ならば気づかないか、気づいても恐れおののき逃げ出す。しかし、上条はその違和感を知っていた。
「……また何か異変なのかーー紫さん?」
上条の視線の先には、1つのスキマ。
その先にどんな世界が広がっているのか、そんな興味すら失わせるような不気味な目がギョロギョロと動いている。
それらと上条の目があった。それらは上条を凝視する。上条もそれらを見る。
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