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えぇ、と返ってきた返事は女性のそれだった。
突如スキマが広がり、中から1人の女性が現れる。その姿はまさに幻想のようでなおかつその存在感は決して隠せるようなものではなかった。
八雲紫。日本のどこかに存在する幻の里、幻想郷に君臨するスキマ妖怪である。
「今回は幻想郷ではなく、別の世界よ」
紫はそう言い、別のスキマを生み出す。
相変わらず先の見えない無限に広がるその空間を見て、上条は唾を飲み込む。
「俺はいいけど、インデックスを1人にさせてるんだ。何も言わずに行くわけにはいかない」
「それには及ばないわ、当麻」
「お前……博麗!」
紫の後ろから現れたのは、紅白の装束をまとった巫女、博麗霊夢。幻想郷の核になる博麗神社を守る重要な人物である。
「私がその子に説明して、あんたが戻るまで面倒みるからさ」
「そうか……わかった、ありがとう」
気にしないで、と霊夢は返し、紫と目配せをする。
「それでは上条当麻……あなたに今回の目標を教えるわ。
ーーちょいと、旗を折ってきなさい」
「……旗?」
思わず首を傾げる上条であったが、相手方は彼の理解を待ってくれるほど良心的でもなかった。
それまで紫の近くに浮いていた別世界へのスキマが、上条の足元へ移動している。当然重力に逆らうような力を持っていない上条は、何かを叫びながら真っ逆様に落ちていったーー。
「まともな説明しないでよかったの?」
「彼にそんなもの必要ないわ。どうせ不要なルールだったら、彼はぶち壊してしまうんでしょうし」
そう言い紫は不敵に笑う。それはまるで、すでにこれから起こるすべての事柄を見通しているかのような笑みであった。
上条当麻の、新たな冒険が始まる。
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