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痛みは一瞬だった。
ドスン! と音をたてて地面に叩きつけられたのだ。叩きつけられたと言っても、座り込むような形で、だが。
「ってて……ここは、どこだ……?」
上条は自分の尻をさすりながらあたりを見渡す。そこは地下のようであり、一般人が入ってはいけない禁止区域のようにも思えた。
暗い雰囲気をどうやっても拭えないようなその空間の中、上条は腰を上げて歩き出す。
(紫さんは、旗……フラグを折ってこいって言ってた。なら、この世界に困ってる人がいて、俺の持つ右手がその人を助けられるかもしれないってことだよな)
だったら、こんなところで立ち止まっているわけにはいかない。自分の力で助けられる人がいるのなら、自分が動かなければいけない。
上条当麻とは、そういう人間なのだ。
誰かのために自分が傷つくのをいとわない。それが彼の本質なのである。
(かといって……)
そして、少し歩いて再び立ち止まる。
(何の手がかりもないのにどうすりゃいいんだ? ただ歩き回るだけじゃ、ここを出られるかも分からないな)
数秒思考し、大きくため息。そして口から漏れた言葉はやはり彼を象徴するようなものだった。
「はぁ……不幸だ」
「……ほむら、ちゃんーー?」
唐突に、困惑の表情と呼べるような声が近くから聞こえてきた。
まだ確定はしていないため、上条は積み上げられたダンボールの壁に隠れて様子を見る。
そこには、座り込む少女とそれを見下ろす形で立っている少女、そして。
(なんだ、あれ……動物……?)
図鑑でも見たことのないような小動物を座り込む少女が抱えていた。遠くからではあまり分からないが、ところどころ体が赤く染まっていて怪我をしているのは明らかだ。
(立ってる女の子があの動物に攻撃したところを、座ってる女の子が助けてかばったのか? ……こうしちゃいられねぇ!)
もしかすると小動物をかばう少女にまで被害が及ぶかもしれない。上条にはもはや迷う必要は一切なかった。
2人の間に入り両手を広げる。座り込む少女もだが、ほむらと呼ばれた少女は特に驚きの表情を浮かべた。
「今のうちに早く逃げるんだ!」
「え、えっと、あの……」
オロオロする少女に「早く!」と言うと、うろたえながらも少女は小動物を抱えて走っていった。
まどか! と他の少女の声も聞こえる。後から追いかけてきた友人だろうか。
(なら一安心だ。後は……)
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