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ゆずが逃げ込んだのは女子トイレ、有難い事に誰もいない鏡の前で突っ立っていた
『は…はは…ぁはは…』
リボンの付いたブラウスを脱いでスーツに着替えたらきっとちっちゃなサラリーマンだ
何も発する事なく廣瀬は持ってきたペットウォーターをゆずの頭にかぶせた
乾いたスタイリング剤が少し糊になって見事にゆずの前髪は7:3分けのヘアスタイルに
ゆずの肩に手を置いて如何ですか?似合うでしょ?そんな誇らしげな視線を投げた廣瀬
そんなリーマンヘアを手グシで整え直してみても切りすぎてる浮いた前髪
『結局…私も…浮わついてたってことか…ふふ…』
あれだけ作らないと言った前髪もあんな冗談だったろう告白も…キスも…たった一言に
まんまと面白いほど真に受けてたのだろう…。
『ん…帰ろう…かな…荷物…』
浮わついた前髪を手で押さえながら授業が始まったのだろう静かな廊下を下駄箱に向かい歩いていた
曲がり角…死角からゆずに伸びる大きな影
『…ギャッ!!んんん??……!』
「シッ!」
もう少しで発狂出来そうな所で口を覆われ見上げると
「出てくんの…おせーよ」
(ひ…廣瀬…?)
「この手、退けても静かに出来る?」
(コクコク頷いて見せるゆず)
「…お利口さん………っ!」
『何すんのょぉっんん゛っ☆×‥!』
「……」
『……』
黙っておける分けがあるまい…しかし止められたけど…でも本当にこの人あの廣瀬でしょうか…?
『っんンン…はっぁぁ…っゃ』
言葉を中途半端に止められた半開きの口に呆気なく熱い舌が潜り込んで
逃げようとしても執拗に追いかけて絡ませてくる二度目の大人のキス
口角から自然と流れる涎…構うことなく力の抜けたゆずの腕は廣瀬に着いていこうと必死に回された
「……」
首筋に滴る涎をチュッと小さく舐めとると…
「…黙らせるのはこれが一番」
皮肉にも首を傾げて憎たらしい笑みを向ける廣瀬に
騙されてもいい、そう思えてならなかった。
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