かすがゐorかすがひ

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年ふれど飽かぬ心といにしへにかけがねうちて俺、未青年 意訳 年月が経ち歳を重ねても飽きる事のない想いであり、また誰にも打ち明ける事のない感情だと思っては、昔の思い出の詰まった扉にに掛金を打ちつけて、俺はまだ昔のような未青年だと言う。 解説 私の好きな家人に「春日井健」という方がおられます。現在でこそ擬古的な歌風を好む私ですが、和歌の世界に入った当初はそんな事もなかったのですよ。むしろ古典短歌は古文を学ばないと理解できなかったので、ある程度わかり易い明治以降の作品ばかり読んでいましたしね。 さて歌の話に戻りますが、なぜこの歌がその『春日井健』と関係しているのかと申しますと、まずは『かけがね』という言葉に注目して欲しいと思います。これはいわゆる扉を施錠するための金具を指すのですが、別称にて鎹(かすがい)とも呼ばれます。お分かりですね?これを春日井の音と重ねたワケです。ただ、なぜ直接『鎹』の音を使わなかったと問われますと、これは単に私の趣向と、「かすがひ」と「かすがゐ」との表記の違いが気に食わなかっただけだと述べさせていただきます。 しかしそうする事によって『春日井健』を連想させる事が難しくなりましたね。そこで注目していただきたいのが、結びの『未青年』という言葉です。本来ならば『未成年』と表記されるものなのですが、僭越ながらここに未青年の文字を置く事により、『春日井健』という家人への尊敬を表したいと思った一首であります。
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