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「カズをはなせ!」
凄い速さで走り、勢いがついた状態で突き出されたひ~さんの拳は
男の人の股間を直撃
「ぎゃっ!」
ボクの手を離して、男の人は両手を股間に当てうずくまる
「何! 聖どうしたの!」
ひ~さんのお母さんが出て来ると、男の人はぎこちなく走って行った
「おかあさん! あのひと、カズのうでひっぱった!」
「何ですって! ちょっとアンタ! 待ちなさい!」
ひ~さんのお母さんが追いかけるけど、男の人は車に乗り込み
急発進で行ってしまった
「良しナンバーは見えた! 聖! カズ君と家に入んなさい!」
ひ~さんのお母さんはボク達を家に押して玄関を閉め、鍵を掛けて行ってしまう
残されたのは涙が止まらないボクと、ひ~さんだけ
「カズ、いたい?」
「ひっく、ぐすっ」
泣きながら首を横に振ると、ひ~さんはボクを置いて家の中を走り
テッシュの箱を持ってきた
「カズはなかんで、なみだもふこう」
頭を撫でてくるひ~さんは、全然気持ち悪く無い
泣き止みながらずっと玄関に座って、ひ~さんのお母さんを待っていた
しばらくしてカチャと鍵が開いて、入って来たのはボクのお母さん
「和樹! 大丈夫! 待っててって言ったでしょ!」
「ごめんにゃざい~」
まだ詰まった鼻で上手く言えなかったけど、お母さんはボクを抱きしめ
「無事で良かった! 勝手に家出たら駄目だからね! もうしないで! 約束しなさい! 良い!」
「ぐすっ、うん」
頷くボクをそっと離して、後ろを向き頭を下げる
「知恵実さん、お願いします!」
「えぇ、玄関に鍵掛けてカズ君外に出さないわ! 警察にも電話したし!」
「ありがとうございます!」
「良いわよ、お互い様!」
頭を下げ、ボクの方を名残惜しそうに振り向き
お母さんは走って行った
「大変ね、若くして未亡人だなんて」
「おかあさん、みぼうじんてなに?」
「聖がもうちょっと大きくなったら教えるわよ」
「おおきいもん」
「小さいわよ! さぁカズ君もいらっしゃい、お母さんが帰って来るまで遊びましょう」
「ぐすっ、うん」
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