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「分かったよ」
怒られ肩をすくめたおじさんの服をひ~さんは引っ張った
「おとうさん! もっかいやって!」
「駄目だってさ、他の遊びするか」
天井近くに投げられて楽しいと笑うひ~さん、ボクはますます尊敬して憧れた
その後の遊びは……やっぱり怖くて、しかも酷かった
おじさんはひ~さんを左手で目隠しして、突然右手でひ~さんの後頭部を叩く
「いたっ! いたい~!」
叩かれパンッと鳴った後頭部を押さえ泣くひ~さん
泣き出したひ~さんを初めて見て、ボクが硬直して居ると
おじさんはニヤニヤしながらひ~さんに囁く
「聖の目玉が出て来たぞ、これで目玉焼き作るか」
「いや~! もどして~!」
もちろん目玉は出て無いけど、ひ~さんは騙されている
ひ~さんがもどしてと言うとおじさんは左手でまた目隠しをして
「ほら戻った、目を開けて見ろ」
ひ~さんが泣き止み目を開けるのを見て、おじさんはボクに囁いた
「面白いだろ?」
騙す楽しさを教えられ楽しいと思ったが、涙ぐむひ~さんに胸が痛くなる
この目玉焼き遊び……
やっぱり酷い……
他におじさんは普通にトランプしたりオセロしたり、優しく遊んでくれて
お母さんが迎えに来て家に帰る頃には、ひ~さんはケロっとして笑ってたが
おとうさんはこわい!
なおさらそう思った
この日の変質者は何日か前からボクを狙っていたらしく
しばらくは幼稚園の先生が園児みんなに注意をして
送り迎えも周りを警戒するお母さん達がピリピリしてたのが怖かった
あの変質者が何をしたかったのか、全く分からないままのボク
もう2度とあの人に会いたく無いと、ただ思っていた
この出来事から1人で外に出なくなり、小学生になって忘れるまで
ボクは変質者に出会う事はなかったが、人に触られる事を嫌悪する様になって行く
平気なのはひ~さんだけ
騙す楽しさや意地悪の面白さに目覚めても、ひ~さんだけには極力しないと決めた
ひ~さんは誰よりもボクの特別だから
でも時々ボクがイタズラをしても許してくれるひ~さん
ひ~さんはとってもとっても大切なボクの友達
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