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物心つく前から、ボクは見た目が良かった
「まぁ~! 可愛い子ね! お嬢さん?」
「いいえ~、息子ですよ」
ボクを抱っこしてお母さんが出掛ければ、必ず誰かが近づいてくる
それが怖くて
動ける様になると、抱っこするお母さんに顔をくっつけて隠す事を覚え
次第に声を掛けられ無くなったが
公園デビューでお母さんとママ友になった人は、0才からボクの顔を知っていた
「人見知りなのね~! 可愛い! 家の息子なんかやんちゃで大変よ~」
「この子内弁慶なの、外だとこの調子で」
「目を離すと居なくなるよりましよ! 聖なんか足が早くて捕まえるの大変なんだから!」
「でも和樹は男の子なのに動きたがらなくて」
お母さん達が話す間、ボクは1度も顔を上げずに抱っこされ続け
音しか聞こえない自分の世界に閉じ籠る
「おか~さ~ん、ブランコ! ブランコ!」
「分かったわよ、乗せれば良いのね」
「聖君はお喋り上手ね! 和樹なかなか話さないのよ」
「一才ちょっと過ぎてこれだとうるさいのよ~」
「はやく~」
「はいはい」
ブランコの揺れる音に心はひかれるけど、人と話すのは怖い
男の子の笑い声に少しだけ顔を上げて見ると
楽しくて仕方がない様子で遊んでいた
公園に連れられる度に挨拶してくるけど、話した事は全く無い男の子
ようやく動いたボクにお母さんは顔を覗き込み笑い掛ける
「和樹も乗る?」
「いや」
また顔を隠し、グリグリと頭をすり付け横に動かす
いつもその状態
お母さんはため息をつきながら、優しくボクの背中を撫でる
シングルマザーで働くお母さんが公園にボクを連れて来るのは休みの日だけ
保育園に預けられる間もボクは保育士さん泣かせだった
「和樹君、みんなとボールで遊ばない?」
聞かれても体育座りで丸まり顔を上げる事も話す事もない
「積み木はどう?」
「……」
「絵本好き?」
「……」
保育士さん達は一生懸命だがボクは絶対に動かないまま
諦め他の子の面倒を見る為に保育士さん達は離れていく
女の子と勘違いされ、男の子に意地悪され
髪を引っ張られたり突き飛ばされてもボクはまた丸まり動かないまま保育園で過ごした
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