自分が嫌い

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苛めが終わり、ボクは初めて自分からお母さんに父親の話題を出した 「どうしてお父さんが居ないの?」 お母さんは無言で古いアルバムを出して、開いて見せる アルバムの中にはボクに似た男の人が、お母さんの肩を抱いている 「和也って名前でね、体が弱い頼りない男だったは。頭痛持ちでね、頭が痛いって言いながら医者には行かなかった……それが……原因で……」 涙を滲ませ鼻水をテッシュでかみ、言葉を詰まらせながら話していく 「倒れて救急車呼んで……間に合わなかった……私がもっと早く気づいていたら! ごめんね……和樹……」 涙はボクの頬に落ちて、お母さんの後悔と悲しみが心に染み込んだ お母さんのせいじゃ無いと言いたかった、でも言葉は出ない 沈黙の中ボクたちは抱き合い、お互いの温もりだけを感じ続けた 平和になった学校生活 一緒に遊ぶ友達も増えたが、ひ~さんは特別だった お人好しで正義感が強いひ~さんに凄く憧れ、ひ~さんみたいに賢く強い人に成りたいと頑張ってみた しかし勉強を頑張れば知恵熱を出し、運動をすれば筋肉痛で動けなくなる 全部が散々な結果で三日坊主 それでも成りたくて、決意をみなぎらせて居ると テレビからアニメのセリフが聞こえてきた 《オレは海賊王になる》 聞こえたセリフに気持ちを代弁された気分になって、ひ~さんと公園で遊んでいた時 ジャングルジムに登り、1番上に立って宣言しようとしたが 立てずにジャングルジムの上に頭を出した状態で宣言した 「オレはひ~さんに成る!」 「はぁ? カズが俺に成るの?」 格好良くジャングルジムの天辺に立って居たひ~さんは、驚いてボクを見た 「俺はカズはカズのままの方が面白くて好きだな」 「えっ! ひ~さん本当!」 大嫌いだったボクを好きだと言った、ボクが尊敬してる幼なじみ その後ひ~さんに成ろうとしても出来ないのは分かっていたが、諦め切れず真似をして ボクからオレと口調を変えたりした もしひ~さんがオレを好きだと言ってくれなかったら、オレは自分が大嫌いなまま 一生ずっと生きていただろう ひ~さんの何の気なしの言葉に、オレの心は救われたんだ
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