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疲れさせるだけだと知っていたけど、オレ達が微妙になっている原因
進路問題を口にした
「オレ……絶対大学行かないから」
「和樹! せっかく良い高校に入ったのに!」
「就職するから」
「家計は気にしなくて良い……」
「そんなんじゃ無い!」
ダンッとテーブルを叩くと凍りつく食卓の雰囲気
自分でも制御出来ない激情がさらにややこしい事態にしている
学校では使える話術も、家に帰ると出て来ないのが悔しい
説得したいのに出来ないもどかしさは、お袋も同じだろう
「大学には行きなさい」
「嫌だ」
平行線をたどる話題だが、早く決着をつけたかったから話したのに
今日も決着は着かない
自然と早食いになって箸を置き、ご馳走様も言わずひ~さん家に駆け戻った
お袋がひ~さん家に泊まるのを了承するのも、お互い冷静に話す為距離を置く必要を感じてるから
思春期や反抗期なんて、言葉では軽く片付けられるけど
ガチのリアルでは苦くて辛く、毎日心が傷だらけだ
オレの為に鍵を開けていてくれた玄関に入ると、家族の笑いとひ~さんが軽く怒る声が聴こえる
いつもなら靴を脱いで入り混ざるのに、今日は出来なかった
ひ~さんは恵まれてる
両親が揃っていて妹もいるし、能力も優れていて賢く力も強い
性格だって優しくて正義感が強い
完璧を地で行く男
時折見せる弱音さえ、人間味があって好感を増させる
大学に行きたく無いのは、ひ~さんと同じ大学に行けないのが分かってるから
高校も……同じじゃ無いなら定時制か通信制に行くつもりだった
就職したいのだってお袋と同じ服飾系、モデルでは無くファッションの仕事
何もかも誰かに依存してる自分が腹立たしくて
ダメだと分かって居るのに……
まるで汚物かゴミの様に自分が下らない存在に思う
苦しくて苦しくて苦しくて!
底無し沼に腰まで浸かった気分に、ずっと玄関に立っていた
数分後、ひ~さんが居間から来た
「玄関が開いた音が聴こえたと思ったらやっぱカズか、何してんだ? 入れよ」
笑って右手の親指を家の中に向け、オレに入れと促すが
多分みっともない顔をしているだろう、オレは動けないでいた
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