サラと亜人族の姫君

2/269
1093人が本棚に入れています
本棚に追加
/285ページ
 「あまり良い報せではなさそうだな」  うららかな陽気の中で誰一人としていない空に耳を傾けていた男性らしき人物。その容姿は綺麗な西洋人形を思わせる。  だだ違和感があるとしたら、それは通常とは異なる尖った特徴のある耳だろう。  それは誇り高き種族の証で男がハイエルフと言う事に他ならない。肩までかかる上等な絹とみまごう程の細く豪奢な白金色をした髪が、風のいたずらで大気中へと舞乱れる。  まどろっこしそうにその手で顔にまとわり付いた髪を払い、家の中へ入ろうと踵を返す。  ざっざっざっ!  不意に近くから足音が耳に入ってくる。それはよく聞き慣れた彼の友人達が大地を踏み鳴らす度に起こる雑音。  「オーイ、シェイド!」  シェイドと名前を呼ばれた男は、軽い笑顔で来客を向かえる。  「ようサラ、今から仕事か?」  「ああ、いつものヤツ頼むよ」  用件を聞いて、家に入るシェイドは中からカゴを携え出てくる。  カゴの中は、2種類の色付きの液体が入れられたガラスの小ビンが何本もあった。  「キズ薬と体力回復の薬だけでいいのか?」  「それだけで十分だろ、この森には今のところキケンな事はないだろうから」
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!