その町、魔物の巣につき。

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【違う、その者は私を助けてくれたのだ……そこに落ちている黒い残骸から、な】 「助けたわけではありませんよ。交渉の邪魔をされたから斬ったまでです」  師匠が「交渉?」と、弟子に問う。弟子はいつもの無表情で師匠を見下した。 「師匠を食べさせる条件を言おうとしたんですけど邪魔されてしまって」 「この鬼弟子! なんでそんなに鬼なの!?  君、人の姿をした悪魔なの!?」  毎度のことながら、この弟子は酷い。淡々と繰り出されていく毒舌。暴力。そして蔑んだ視線。  もちろん、普通はどれも師匠に贈るものではない。  その光景を唖然としながら見ていた大狼は、何かが切れたように笑い始める。  その笑い声に、弟子と師匠は顔を見合わせ、弟子は無表情に、師匠は満面の笑みを浮かべた。
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