その町、魔物の巣につき。

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【あぁ……私の子供達……】  大狼は体を震わせ涙を流す。弟子はただただそれを見ていた。その雫を流す鋭く赤い瞳を。灰色に鈍く光る剛毛は子供達の血液に濡れ、所々黒く染まっていく。 「……交渉の途中に邪魔しないでくださいよ」  弟子はポツリ、と球体に向け言葉を投げかける。  球体は言葉を発さない。いや、発せないのか。闇色の太い針が、球体の周りに作り出される。 【人間がかなう相手では――】  大狼がそう叫んだ瞬間。針がバラバラと崩れ、球体が縦半分に割れた。球体の攻撃手段? 否、それは完全に機能を停止していた。  弟子の腰には、煌めく間もなく納められた白刃。  カチン、と鞘に刀身が納まる音と、簪の鈴のしゃりん、という音だけが廃墟と化しているその町に響く。
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