その町、魔物の巣につき。

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【お前は一体……!】  大狼の震える声に、弟子は振り返る。その目に入るのは、どこか怯えた赤の瞳。 「僕は師匠の弟子です。それ以上でも以下でもない」  弟子は淡々と、呼吸すら乱さずにそう呟き、大狼に問いかけた。 「あの変な丸い物のことを知っているようでしたが?」  その問いに、大狼は首を縦に振った。  大狼曰わく。狼達は今まで森に住んでいたが、突然あの球体が現れて森はその球体の中に取り込まれていったという。  命からがら逃げてきた大狼とその子供達だったが、先程の奇襲で子供達も命を落としてしまった、とのことだった。 【球体の正体はわからん。……だが、奴らはとんでもなく高度な魔法を駆使することができる。私達が束になってかかっても傷一つつけられなかったのだ……】  魔物では適わなかったモノを、ただの人間である弟子が一太刀で倒した。  大狼は弟子を、尊敬と恐怖の入り混じった感情が渦巻く瞳で射抜いていた。  弟子はその視線をスルーして、師匠を蹴り起こす。二、三、四、と腹を蹴った時、師匠の目蓋がぴくりと動いたが、それをもスルーして五発目を入れた。
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