その町、魔物の巣につき。

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【人間とは、こうも面白いものだったのだな……】  そう言った大狼の赤い瞳は、鋭くも優しい笑みを浮かべていた。 「……で、師匠を食べさせる条件ですが。僕の下僕になってください」  師匠が「はぁ!?」と声を上げ、大狼は驚き過ぎて声も出せない。 「旅が終わったら食べさせますよ、ちゃんと」  師匠に蔑んだ瞳を送るのを忘れない弟子。さすがである。 「なんでそんな大事な約束、君がするの!」 「これで師匠の命は僕のものですね」 「日頃の暴力で私の命が削られているようなものだから! もー! あとそのセリフちょっといろんな意味でドキドキする……」  それは、いつもの光景。師匠は呆れながらも、楽しそうに笑いながら説教をし、弟子が無表情でそれを聞いていない。そんな光景。
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