その町、魔物の巣につき。

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 その光景を、空に浮かぶ三つの黒い球体は【見】ていた。  弟子は師匠に蔑む視線を送りながらも、そちらに視線を向けている。  弟子の頭に音が響く。それは、声。音にしかとれない声が連続して響き。 【お】 【ま】 【ち】 【し】 【て】 【お】 【り】 【ま】 【し】 【た】  弟子の瞳に、何かが流れ込み、彼はゆっくりとそれを自身の中に受け入れる。瞳を閉じ、それを自分の中に閉じ込める。  その表情にいつもと違うものを感じたのか、師匠は弟子の肩を叩いた。 「大丈夫ですよ。触らないで下さい、穢れる」  そう辛辣な言葉を浴びせ、うなだれる師匠に追い討ちとして蹴りを食らわせる。  球体は、もう浮かんでいなかった。
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