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その斬撃を流れるように体を右に傾けてかわし、飛び退く弟子。
「君は本当に反射神経がいいよね。いや、違う。無意識に相手の一手先を読んでる。読み間違えることなく、正確に」
そう言って師匠はその瞳を閉じ、刀を下段に構える。
地面と平行になる程度まで下がった刀。弟子はそれを見て、少しだけ息を吐く。
「……来て下さい、師匠」
その表情は端からみればいつもの無表情だった。しかし、師匠はその表情の変化に気づく。
無表情の中に、獰猛な笑みが見えた気がした。
「はぁっ!!」
その声と同時に、師匠は突きを繰り出す。その突きは風を纏い、弟子に襲いかかった。
弟子は、無表情に見えるその表情のまま、突きに向かい駆け出す。
その突きは弟子の心の臟を捉え、そして。
「がっ……!?」
血液が、生えている草に滴り落ちる。
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