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弟子の視線に気づいたのか、師匠はまたにっこりと笑う。その微笑みは弟子の瞳に映り。
――師匠は自分にないものを持っている。
いつしか、彼にはそんな考えが生まれていた。自分がどんなに欲しても手に入らないモノを持っていると。
【なぁ、主よ。腹が減ったのだがその人間を食べてもよいかな?】
大狼に声をかけられ、我に返る弟子。
「えぇ、大丈夫ですよ。師匠なら」
「わ、私はダメだってば! どこかに餌とかないかな……?」
師匠の言葉に、弟子はおもむろに荷物を漁り始める。そして、荷物の底から袋を取り出した。
「はいどうぞ」
袋にはかわいいフォントの『わんわんのえさ』の文字。中身は茶色い固形物。
「それは明らかにドッグフードだー!!」
【ん、案外美味いな】
「いいの!? 仮にも大狼それでいいの!?」
師匠は息を切らしながらそう叫ぶ。
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