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「もうなんなんだあの師匠に対して鬼畜弟子! 辛辣! 無表情オバケ!」
ぶつぶつ言いながらも、笑顔を絶やさずに師匠は昼食を作る。
頬を撫でるような風が吹く、見晴らしの良い丘。近隣住民からは【風霊の丘】と呼ばれるのも納得だ、と師匠は一人頷いた。
「はーっはっはっはっは! はーっはっはっはっげほごばぁっ!!」
「先生? なんで血を吐くんですか先生!? だ、誰か! 誰か美味しい昼食を!」
「お、美味しい昼食さえあれば……がくっ」
「先生? せんせーい!?」
料理をしている師匠の前に走っていきなり現れ、小芝居を始める二人組。
先生と呼ばれる方は、灰色のくすんだ髪に、額に一本の太い角がある。肌の色は褐色で、それ故にその透明感のある白い瞳は引き立っていた。
白衣を羽織っており、いかにも学者然とした男だ。その口からは、一筋の赤い液体が垂れている。
もう一人は紫色の肌を持ち、漆黒の髪と瞳をした青年。おろおろとして、あわあわとしている。同じく白衣を着ているが、助手のようなものだろうか。
「……えっと、とりあえずその赤い液体はこの間の町の特産品のトメィトだよね、そこにあった」
青年と学者然とした男はぴたり、と固まる。
まな板からは、先程そこにおいておいたプチトメィトが消えていた。
ちなみにトメィトとは、酸味が強い赤い実である。汁気が強く、強く噛むと赤い液体が飛び散る。
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