その弟子、師匠を敬わない。

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 中年男性の方は肌は白く短めの黒髪に漆黒の瞳を持つ。  紺色で襟が白い着流しと白い帯を着用し、腰には赤い鞘の刀を差していた。  優しさが滲み出ているような表情は、見るものを和ませ――どうやら彼の弟子は違うようであるが。  一方、青年の方は長い黒髪を上の方で括り、邪魔にならないように簪(カンザシ)を使い留めていて、その簪には翡翠の宝石と小さな鈴が一つついている。  着流しの色は白く、シミや汚れ一つない。帯と襟のみ紺色で師匠と真逆である。腰には青鞘の刀を差していた。  切れ長の藍色の瞳は刺々しい印象を与え、無表情がそれに追い討ちをかけている。  左手には番傘を掴み、苛立っているのかコツコツと地面を叩いている。 「で、なんで僕まで巻き込むんですか。一人で樹海までいけばいいでしょう?」  冷徹な声にめげず、中年男性は自分のできる範囲の可愛さを出した。 「樹海……いや、師匠ほら、寂しいと死んじゃうのっ」  暫く冷たい風が流れ、ぐわし、と青年は中年男性の頭を掴み、額に二、三発デコピンをした。バシンバシンとデコピンらしからぬ音が響く。 「黙って下さい気持ち悪い」 「ちょっ、ちょっ、痛いデコピン痛っ!? おかしいから威力おかしい!!」  中年男性は涙目でやめてくれと懇願する。これでは、どちらが上かわからない。
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