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「でかくなったな、緒方はじめ」
はじめの前に現れたメジャーリーガーの圧倒的なオーラにはじめは思わず言葉を探した。だがこの場に適する言葉は見つからなかった。
鈴木はため息に近い一息をつき、話しはじめた。
「命日以外の日はもう二度とここには来ない。あの日、そう誓ったはずだよな」
その重く低く響く言葉にはじめは何も言い返すことが出来ずにいた。
鈴木はゆっくりと近づく。
「何か言えよ。泣き虫坊主」
「お、俺は泣き虫なんかじゃない!」
「今の自分の顔を鏡で見てみろよ。十年前と同じ面してるぞ」
はじめは何も言い返せなかった。泣いていると言えば言い過ぎだが、はじめ自身途方に暮れたような気持ちがあったからだ。
そして鈴木は静かに口を開いた。
「お前に何があったか知らないし、別に知りたいとも思わない」
そして鈴木ははじめの胸倉を掴んだ。その力強さにはじめは一瞬息をするのを忘れた。
「だがな、男が一度交わした約束を破るんじゃねえよ」
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