第一話 〈決意〉

8/11
前へ
/221ページ
次へ
「そして俺が来る頃には絶対に会わない奴がいた。それがお前だ、はじめ」 はじめは固唾を飲んで、鈴木の言葉を待った。 「十年前、ここには来ないと誓ったお前がいた。これも運命なのか、それとも緒方さんが俺達を引き寄せてくれたのか…俺はそんな気がしてならないんだ。緒方さんがお前を助けろって言っているような気がする。 だから今日だけは特別だ。お前の話を聞かせてくれ」 はじめは一瞬悩んだ。 だが自分一人で抱え込んでも解決しないと分かっていた。ならばこの人に話してみようと思った。 それで答えが見つかるなら安いものだと思った。 はじめは野球部で起きたことを思いつく限り話した。 田口悠介が巻き起こした事件のこと。それから離れ離れになった仲間達。 それでも奮起しようとした。自分の夢、本山水樹のことがどうしても諦めきれなかったこと。 だが突然降り懸かった親友・前田賢一の退部。何も理由を明かさず、はじめの前から姿を消した親友がはじめの心を強くえぐった。
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

736人が本棚に入れています
本棚に追加