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「…そんなことがあったのか」
はじめの話を聞き、鈴木は小さく一息ついた。鈴木は少し複雑な気持ちになった。
十年も経てば、はじめは成長する。そして総一郎や自分と同じように色々な壁とぶつかりながら生きている。それはすごく嬉しいことであり、同時に時の流れの速さを感じさせられた。緒方総一郎の遺伝子はここまで成長したのかと改めて思った。
「人生とはやはり不思議なものだ。俺はまるでお前の話を聞くためにここへ導かれたように感じる」
鈴木は小さく笑った。
「はじめ、人には人それぞれの事情がある。野球はみんなが同じ方向を見て、同じ目標を持って、初めてプレー出来るんだ。
酷な話だが、お前の親友は何かしらの事情でそれについていくことが出来なかった。だが人生なんてものはそれの連続だ」
鈴木は自身の経験したことを自分の中で整理しながら、言葉を慎重に選んだ。
はじめの力になりたいという気持ちから中途半端な言葉は言えなかった。
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