プロローグ

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田口悠介の暴力事件からはや三ヶ月が過ぎた。三ヶ月前と比べてしまえば、かすみ野球部は変わりすぎてしまった。 田口悠介が引き起こした事件により、田口悠介はおろか半分もの部員が野球部を退部した。それでも緒方はじめは残った仲間達と共に闘い抜こうと決意した。 だがそんなはじめを待ち受けていたものは、親友・前田賢一の突然の自主退部だった。 ケンは何も理由を明かさず、ただもう野球をやりたくないという一点張りで野球部を退部した。もちろんはじめは必死に引き留めたが、結果は残酷なものだった。 そして今、はじめは小さい頃決意してからは、ある日を除いて行かないと心に決めていた場所にいた。 「父さん…元気にやってるか?」 はじめは父・総一郎の墓の前にいた。命日以外には絶対に行かないと決めていた場所だ。 「父さん…今の俺の目の前には壁がありすぎる。それを楽しめっていつも言ってたよな。でも…俺もうどうしたらいいか分からねえよ…」 ケンの退部がはじめにとって、本当に心をもがれた。絶対自分にはついて来てくれると信じていた親友のあの言葉がはじめの心に深く突き刺さっていた。 「もう二度とここには来ないと決めてたのじゃないか?」 はじめは後ろを振り向いた。その声に聞き覚えがあったからだ。
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