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はじめの中で過去の記憶が蘇る。
「…ひっぐ、父さん…」
緒方総一郎が亡くなってから、はじめは毎日父の墓に通い詰めていた。
父の突然死、それによる母のショックを隠しきれない生活、そして母に何も出来ない自分を悔やんでいた。
当時小学生だったはじめにとって、その背負うものの重さはあまりにもはかりきれないものだった。
その時、彼の目の前に現れた。
「…お、おじさん…誰?」
はじめの声に反応した彼は、泣き崩れてくしゃくしゃになっているはじめの顔を見た。
「いつまでそうやってメソメソ泣いてんだよ」
彼は小さいはじめの両肩を抑えた。はじめは驚いたが、大人の腕力に叶うわけがなかった。
「お前がそうやってメソメソ泣いていてもお前の親父は帰ってこないんだぞ!いつまでもいじけてんじゃねえよ!!」
「う…う……だ、だって…」
「だってじゃない!お前が泣いても誰も助けてくれないんだよ!いつまでもこんなところに通う暇があるなら、そのエネルギーどっかにぶつけてみろ!」
当時のはじめにとって、その言葉はひどく感じた。だけど今のはじめならその言葉の意味が理解出来る。
はじめはこの言葉があったからまた立ち上がることが出来た。
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