陽炎

4/4
前へ
/11ページ
次へ
傷がなくなった涼介を見て、大貴は満足そうに微笑んだ後、光の方を向く。 光の方も、砂の片付けを終えて、最後に、小さな弱い炎で燃えているガラス玉のようなものをつかむ。 すると炎は消えて、ただのガラス玉へと変わった。 「…ガラス玉がある限り、また新しく生を受けて、生まれかわれる……」 「光君、はい…瓶だよ」 「サンキュ…」 光は大貴から瓶を受け取ると、瓶の中にガラス玉を入れ、蓋を閉じる。 「俺は協会に持っていくから、大ちゃんは山田をお願い」 「うん」 光がパチリと指を鳴らす。 その瞬間、何事もなかったように、通行人が路地へと歩いてきた。 大貴は涼介を背負い歩きだす。 フードのついた服でなく普通の服で。 光もまた、普通に歩き出した。 同時刻 別の場所 「…」 黒い服、鎌をもった人が、弱い炎を帯びたガラス玉を手にとる。 「新たに生を受ける…?そんなわけない…」 その人物は、鎌の先で、そのガラス玉を粉々に吹き飛ばす。 その風でフードはめくれ落ちた。 「…ゴメンね」 圭人は泣きながら、そう呟いた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加