予兆

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「…」 慧は寝起きのダルさと、熱の喘ぎに顔を歪め、腕を顔に乗せる。 汗ばんだ額 「…あー…あ…」 無意味に母音を発する。 彼女の顔が脳裏から離れない 忘れていたのに 急に思い出されたあの顔 綺麗に整った彼女の顔が 「…な、ぐさ……め」 彼女はいつも歌っていた。 ソプラノの声を高らかに歌って、響かせていた。 合唱… そう、彼女は合唱団の子で なのに いつも1人で歌っていた 当時の自分には、でしゃばったように見えた彼女が、とても美しくも見えた ふと、今考えると、でしゃばりでなく、soloだったんだと気づく。 「…何で、今頃」 少し、人を小馬鹿にするように歌う彼女 名前は何だっけ? 年齢は? 誕生日は? 何で、居なくなったの? 「…」 少し、寂しくなった 熱のせいで思い出したのに 熱のせいで思い出せない。 そういや、昨日…圭人が居た気がする。 俺の部屋で…俺を見つめながら泣いていた気がする。 変な夢だったな
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