小さなちから

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ドーンという音と共に、何かがちぃちゃんをかすりました。 その数ミリと1秒がちぃちゃんに直撃するのを救ったのです。 驚きと痛みにちぃちゃんは泣くことも出来ずにすくんでいました。 「ちぃちゃん!」 いなくなったちぃちゃんを探していたおとなの人が、呆然と座り込むちぃちゃんを見つけました。 ぐいっとちぃちゃんを引き寄せその腕に抱くと、おとなの人は必死に高台に向かって走り出しました。 少し遠くの海の水が、あっという間に引いて行くのが見えたからです。 海で神さまたちも頑張りましたが津波を押さえられたのはほんの1秒だけでした。 時間を置かずに津波がやってきました。 おとなの人は走ります。ちぃちゃんを抱いて走り続け…、もう走れない、と思ったその時、濁流はその足元で帰って行きました。 あと少し遅かったら、2人とも連れていかれてしまったことでしょう。 その1秒が2人の命を救ったのです。
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