とある宿で…。

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あれ? ここはどこだ? それに、この人達は誰? 「えと、あなた達は?」 俺が訪ねると、一番近くにいた黒い髪をした女性が口を開いた。 「アレク?ほんとに私の事…わからない?」 アレク? 「えっと…アレクって?」 「やっぱり…」 黒い髪の女性は苦笑いのような顔をして、目尻には少し涙が…。 「す、すみません!なにか悪いこと言ってしまったみたいで…」 「大丈夫。アレクは悪くないから…」 そう言って女性は部屋を出ていってしまった。 すると、奥にいた二人が近寄ってきた。 そして口を開いたのは、若い男性だった。 「あいつの事なら気にすんな。泣いたのはお前のせいじゃないからな」 あまり状況が把握できなかったから、とりあえずうなずいた。 「あの、俺とあの人は知り合いなんですか?」 「ああ。あいつだけじゃなく、俺たちもだけどな」 男性は続けて言った。 「お前は記憶を失っちまったんだから、仕方ねぇよ」 記憶を失った? 混乱していたが、薄々分かっていた。自分が記憶喪失だって事は。だって、自分の「名前」さえわからないのだから。
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