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夜が深まり、その闇がいっそう濃くなった頃。
わずかさえも町明かりの届かない、暗く静かな空き地に二人の少年がいた。
常人ならば、うっすらとした影を視認する事さえままならないほどの距離に立つ十五歳の二人。だが、彼らは視認出来ないはずの影のみならず、確かに互いを睨み合っていた。
また、長身に細身といった体つきに似合わず、腰に身の丈ほどもある両刃の長剣を下げていた。
まだ抜く様子はないが、月明かりに光る二人の目からはすでに殺気がにじみ出ている。
「いくぞ。覚悟しな」
こう落ち着いた声音で言ったのは、茶髪に黒眼の少年、レオ。セリフには似合わず、優しい顔つきをしている。
彼は長い脚を少し前後にずらし、重そうな長剣をすらりと抜くと、慣れた手つきですぐに中段に構えた。
それとほぼ同時、もう一方の少年、アシュレイも全く同じ体勢を取る。
そして徐々に増してゆく闘気を緑がかった眼に込め、レオを睨む――。
――突如、レオの姿がアシュレイの視界から消えた。
しかし、その程度で焦るアシュレイではない。
むしろ、集中すれば正確に捉えられる足音に、余裕さえ感じていた。
姿が見えなくとも足音だけで十分反応できると考え、できる限り耳を澄ませる。
と、その時だった。
――ザッ。
足が乾いた地を踏みしめる音。
そして、アシュレイの右前方には月光を反射する銀色の輝き。
予想どうりの攻撃に笑みをこぼす。
だが、その笑みは一瞬にして消え去る。
レオの踏み込みから剣を振り下ろすまでの速さが、アシュレイの予想をはるかにこえていたのだ。
アシュレイの顔からはさぁっと血の気が引き、冷や汗が噴き出す。
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