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これが知らぬ声だったとはいえ、強い気配に二人は背後の存在に気付いていた。
恐ろしさを感じるほどの『気』に二人は身震いし始める。
「おいおい。そんなびびんなよ」
怯えずにいられるはずもない。
振り向けばそこには――
ゴツゴツした漆黒の体に、同色の翼、牙、爪が生えた人型の生き物。いわゆる、悪魔。
「なん、で……ここに?」
恐怖がにじみ出た、震える声でこう呟いたのはレオ。
アシュレイよりもずっと大きく震え、遂に力が抜けたのか地にへたり込んでしまう。
「……ふっ。全く面白い奴だな。まぁいい。レオとかいうこいつは連れてくぞ」
訳の分からないセリフと共に悪魔は憎たらしい笑みを顔全体に浮かべる。
赤く血走った黒眼はアシュレイだけを見ていた。
対し、鋭い視線を返すアシュレイの耳に入ったのは、レオを連れて行くと言ったことのみ。
それ以外、その理由さえもどうでもよかった。
アシュレイは即座にとても怯えるレオをかばい、自分より数十センチも大きい悪魔の正面に立ちはだかる。
表情は恐怖から一変し、強い闘気が溢れ出す。
悪魔の目が驚きに見開かれた。
それからふっと嬉しそうに目を細めると、その闘気に応えるかのように体制を整え始めた。
「お前もなかなか面白い奴だ……。楽しませてくれよ?」
そう言った悪魔の不気味な輝きを放つ目は、なぜかレオを見ていた。
――まるで、黙ってみてろよ、とでも言うように。
その視線に気づくと突然ビクッと震え、仰向けに倒れてしまうレオ。
「レオ!」
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